お便り

2025年10月5日
2025年10月5日 Kaleido Graphics 2025 星に願いを
日程:2025年10月5日(日)~10月11日(土)
作者 望月ミサ インタビュー

Q: 万華鏡のようなこの作品はどうやって生まれたのですか?

子どもの頃に初めて縁日の万華鏡を見たとき「こんな美しいものがあるとは!」と心底感動をしたものです。
大人になり、2010年頃「日本万華鏡博物館」(現・埼玉県川口市)を訪れる機会があり、そこで出会ったのは12角形の薔薇窓のような円形模様の見える万華鏡でした。これを見た時、純粋な感動が蘇り、衝撃を受けました。
それからというもの、パソコン上で反転コピペを応用した、いわば「PC万華鏡」で、子どものように無我夢中で沢山のモチーフを作り始めました。

Q: とても緻密な模様ですが、計算して描いているのですか?

元になっているのは写真ですが、元の形がわからなくなるほど加工を繰り返しています。何度も何度も根気強く、切り貼りを試しますが、ほとんどは没です。「偶然性」の面白さも利用していることで、飽きずに続けられているのだと思います。写真を見ると「この素材を万華鏡で見たらどうかな?」という目で見るようになってしまいました。

Q: グラフィック・アートとは何ですか?

一般的にグラフィックとは印刷のことで、平面の複製美術を指します。作品のジャンルをどう呼ぶか迷ったのですが、パソコンで画像データを加工し、プリントしたものを発表しているので、そのように言っています。

Q: プリントするだけでなくレリーフ加工してますよね?

2012年に初めて発表した時には、100人規模のグループ展に出展し、それは全作家が額の代わりにCDケースに入れるという「正方形展」という企画でした。様々なジャンルの作品が同条件でランダムに並びます。この時、どんなに綺麗につくっても、手描きの絵の具の肉厚に、複製プリントは負けているように感じました。毎年行われたこの展覧会で、周りの作品といかに肩を並べようかと工夫をし、CDケースの内寸5ミリの中で、わずかな凸凹をつくる表現の面白さに気がつきました。

Q: それから何度かのグループ展を経て、個展までどのような道程でしたか?

今回の初個展まで13年かかりました。はじめこそ楽しかったのですが、次第に「マンネリとの闘い」に悩まされることになります。グラフィック・デザイナーとして働いてきた中で、「シンメトリーは誰でもできる」と師匠に怒られた若手時代のトラウマもずっと引きずっていました。SNSの普及とともに同じような作品が嫌でも目に入るようになりました。こんなものをつくって何の意味があるのだろうか……?と。

Q: それをどう乗り越えましたか?

ある先輩画家に言われた言葉が私を支えました。
「誰がなんと言おうと、自分がこれだ!と見つけたものは、とことんやった方がいい。やめるのはいつでもできる」
また、2015年にがんを経験し、患者支援活動を10年やってきた結果、死生観を意識するようになったことも大きな影響がありました。

Q: どのような死生観ですか?

「幸せに生きてこそ、幸せに死ぬ」ということ。自分が好きなもの、美しいと感じるものを信じて、ただつくればいいのだと割り切りました。人はいつか必ず最期がやってきます。それは短い場合もあります。太古の昔から、人は亡くなった方を「星」にたとえてきました。そしていつかは自分も星になるのだと。宇宙という大きな生命体と比較したら、細胞のように小さい人間の生涯なんてほんの一瞬でしかありません。人生とは短くて当たり前なのかもと思えてくるのです。

Q: 「星に願いを」という題名に込められた思いは?

人類は「惑星」に「美しい神話」を重ね合わせながら、限りある命を繋いできました。「回転模様」の終わりは始まりで、無限に続きます。時が止まったような、あるいは永遠に続いているような、どちらにも見える世界へ吸い込まれ、難しいことは何も考えずに、ただ無心に「惑星」たちを見つめて頂けたら幸いです。


望月ミサ プロフィール
武蔵野美術短期大学グラフィックデザイン科卒
20歳より制作会社でGデザイナーとして働き、36歳からフリーランス
2005年 デザイン・プロダクション「White Space」設立
お便り一覧
月別アーカイブ

ギャラリーへのお問い合わせ、ご利用申込みはこちらにて承ります

お問い合わせ