お便り

2022年5月6日
2022年5月6日 土谷寛枇 人形展
土谷寛枇、平安工房/古書わらべ(篠塚)お便り&インタビュー

ギャラリーに入ると、存在感のある人形たちが、すわっている。思っていたより、大きかった。美しくて、近寄りがたい。人の手で時間をかけて丁寧に作られたものは、なんであれ、何らかの力を持っている。そこに、身体、表情のある人形となるとなおさら言葉にはできない力が備わる。懐美館

土谷寛卑枇インタビュー
Q 人形をつくるようになったのは、いつ頃からでどうしてつくり始めたんですか?
A 去年で20年になって、自分でも驚いているんですけど、きっかけは、もともと絵を描いていたんですけど、もう限界だと思っていた時に、ある人の人形にであって、こんなに美しい世界があるんだと知って、自分でも作ってみようと思ってつくり始めたのがきっかけです。

Q ある人とはどなたですか?
A 恋月姫という方なんですが、ビスクドールをつくられているかたです。師匠は、吉田良という、粘土の作家です。

Q 球体関節人形は、昔からあったんですか?
A 日本でひろまったきっかけは、ハンスベルメールという作家が写真撮影するのに可動できる人形を作って撮影をして、その写真を見た澁澤龍彦が、感動して日本に紹介して、それをみて衝撃を受けた四谷シモンさんが、日本の先駆者として球体関節人形を製作されて、その人に影響されて、うちの師匠とかつくり始めました。

Q いつごろでしょう。
A 1970年代ごろです。

Q 顔とかは、日本人ではないと思うんですけど。
A 国籍とか考えてないですね。よく聞かれるんですけど、逆に何で日本人じゃないのとおもうの?とこちらから聞きたくなります。

Q 好きな顔ですか
A 好きな顔です。

Q 足のない人形もありますね。
A 無いというか、こういう子と思って作ってます。奇形とかそういう意味ではなくて。

(なにかをみるとき、ある部分を注視してみて、他の部分が意識の外に外れることがあるじゃないですか、そういう感覚でこの子の場合は、両足がある必要がないというか、そこに注視していないという感じなんですよね。奇形とか怪我とかそういったことでパーツをはずしてあるのではなく、意識の外に出てしまったという意味で、抽象的に球体において、身体をコラージュしているというような表現です。篠塚)

Q こちらが土谷さんの世界ですか?
A お客さんが見てくれる普通の人形と、本当に作りたいという感じで作っている人形とあります。オブジェになろうが、なんだろうが、でも人形っぽさは残したいなと。

Q 女の子にこだわる理由ってあるんですか?
A 女の子にこだわっているつもりはないんですけど、そこでイメージしたのが女の子が多い、自分が女のせいもあると思うんですけど。

Q 他に何か言いたいことありますか?
A 他の人ができない形にしようと思ってます。硬いけど生命力あるかなという形にしていますね。

(人形の身体の末端って、顔と同じ位に見られるんですよね。顔は意外と触らなかったりするんですけど、手とか足とか、飾っていると日常的に触ったりする部分なので、そこにどんな表情を持たせるかによって人形全体の印象の立ち上がり方が全く違ってくるので、土谷さんは末端のパーツに力を入れて表情をもたせることに気持ちを傾けています。篠塚)

平安工房(篠塚)インタビュー
Q 最初のこの仕事を始めたきっかっけは何ですか?
A 人形の写真集をささやかに出版しているのですが、写真集に取り上げた人形作家のひとりが個展をやる際、会場だったギャラリーの方から声をかけていただいて、以来10年位いろいろな形で人形展に関わっています。

Q 契約しているギャラリーとかあるんですか?
A それはありません。うちの企画で場所を借りたり、作家がお世話になっているギャラリーの展示のコーディネイトをしたりしています。

Q 土谷さんの作品の魅力は何だと思いますか?
A 土谷さんはいわゆる美少年とか美少女を作るタイプの作家ではないんですけど、粘土にひたむきに向き合い手びねりでモリモリと形を作っていく、野性味のあるような、獣がかったような不思議な作風の作家なんです。造形的には、人形はマネキンではないので、立体に対してはそれぞれの作家の解釈が入ってくるんですけど、土谷さんの場合はリアルに寄せるのではなくて気持ちの方に寄せていくので、そこにかなり立体の嘘が入ってくるんですけど、その嘘の部分にファンタジーを感じていただければと思っています。

Q 人形の写真を撮られているということですが、今も撮っていらっしゃるんですか?
A 写真集をだしているんですが、うちは作家に撮らせています。作家が一番自分の人形をみ見てるし、制作するのに人にもよるんですけど、大体2~3か月この一点の作品に付き合うことになるんですね。そうすると毎日その形を見ているわけで、その作家の目線から切り取った作品というのを残したくて、よその方に撮ってもらうこともあるんですけど、主には作家に極力カメラを持たせて、あなたの目線で見た、あなたの人形を見せてくださいというやり方をして、その写真を編集して、一冊の本にするということをしています。

Q 写真集はどうして作り始めたんですか
A 人形を好きになったキッカケというのが、トレヴィルという会社が出していた人形の写真集なんですね。大判の書籍ではなく小さな判の本なんですけど、小さな世界に閉じ込められた人形の情緒にこころをグラグラと揺さぶられちゃったんですね。そこからすっかり人形という表現に夢中になってしまって。同じような体験をしてくれる人がいてくれたらいいなという気持ちと、人形って展示して手離してしまうと作家達も会えないことが多いんですね。なので、散逸してしまう作品をアーカイブしておきたいという気持ちがあって、それで本の形に残せないかと思いまして、書籍を発行してます。書籍の巻末には、制作年代、サイズ、どんな素材を使って作られたのかというレゾネに近い情報をいれるようにしています。


土谷寛枇 人形展 
球体関節人形

人形作家 土谷寛枇(つちやかんび)による球体関節人形の展示。

土谷寛枇が石塑粘土で造形した少年少女の人形達。
本展は土谷の第4回個展になります。

日程 2022年5月1日(日)~5月7日((土))
主催 平安工房/古書わらべ
Open/Close 11:00/19:00
http://karamangetu.web.fc2.com/

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