お便り

2017年3月27日
2017年3月27日 かんとりーろーど

新たに懐かしい「ふるさと」を知る旅となった。

マルカン百貨店は,岩手県の花巻市にあった。その6階にある大衆食堂が,閉店するという話を耳にしたとき,理由はわからないが,行きたいという強い思いに駆られ,すぐに旅支度をした。
初めて訪れた場所,初めて訪れた百貨店,初めて訪れた大衆食堂。カツカレー,山盛りのソフトクリームを頬張りながら聞くBGMは,遠い昔の記憶に刻まれているような,その場所に集う家族の会話だった。
おじいちゃん,おばあちゃんが昔話に花を咲かせる笑い声。久々のお出かけにはしゃぐ子どもの声は,どこまでも楽しそうだ。あのお母さんは,子どもをしかっているけれど,きっと同じ場所で,おなじようにお母さんもそのお母さんから叱られたのだろう。
物語は,きっと紡がれていく。

郷愁を誘われる食堂を後にし,程よい疲れを感じながら一軒の古い民芸品屋さんに立ち寄った。そこで,目と心を奪われた。燃えるような赤色,目が覚めるような黄色,多数の色彩をもって装飾された馬の置物。
かつての岩手県滝沢村では,大事な働き手であった馬に感謝をするために,冬の間こしらえた装飾品を馬に着せ,初夏の田んぼ道を練り歩く,「ちゃぐちゃぐ馬コ」というお祭が催されていた。その主役の馬を置物にしたものだったのだ。
みちのくの寒さは厳しく,春を待つ民の気持ちは,いかほどだっただろうか。
このお祭りのようなあたたかさと強さを,身にまとう形にしたいという気持ちが自然と湧いた。

この一連の旅路を経て感じた,自分の住んでいた故郷だけではない,もっと大きな「ふるさと」の存在。そしてその「ふるさと」に根付く,感謝を伝えるための力強いお祭り。


懐かしい気持ちと新たな発見に心踊ったこの旅路を2017年秋冬のコレクションへ。

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