お便り

2026年9月18日
2026年9月18日 【私の感覚の根源】
ヒナイジユズル

昔から、使い込まれた家具の傷やシミなど、経年劣化によって生まれる表情に惹かれてきました。

社会の中で役割を終え、 見過ごされていくものの中に、
新しい価値や魅力を見つけ出すことに、強い興味を持ち、 2004年に 昭和レトロ家具店を創業。
その後、店舗空間デザインや喫茶店へと事業を広げ、20年間走り続けてきました 。

そして、流木彫刻に出会いました。

流木は、海を漂い、朽ちながら、 人が意図して作ることのできない不思議な造形をしています。
その造形には、古い家具の経年劣化に引かれてきたのと、同じ感覚で魅力を感じいます。

流木が生み出したその造形を、動物の姿に見立て、少しだけ手を加え、 動物の生命を立ち上げていく。

あらかじめ作りたい動物を決めているわけではなく、
どんな動物になるかは、 流木そのものが決めているように感じます。
僕の製作は、 流木の「あるがまま」をまず受け入れることから始まります。



それは、作家としての自身のあり方にも、同じことが言える気がします。

歩いてきた過去や、いまある環境、興味、 経験、性格。 まずは、その全てを否定せずに受け入れる。
そこから、今の自分に何ができるのかを考え始めるのだと思います。

創作では、自分の外側に正解を求めすぎず、自分の中にある必然性を大切にしています。

様々な縁を経て、今、自分の手元にある必然を見つめ、何を使い、 どう生かし、 どう見せるのか。
そして、今ここにある意味を考えながら、 創作しています。



25歳で仕事を立ち上げた頃から、 見過ごされていくものに、新たな価値を見出す。この思いは変わっていません。

20年間の仕事を通して、好きなことや得意なことを残し、自分に合わないやり方をそぎ落としながら、 それらを存分に活かせる仕事の形を探してきました。

今は、 つくり方も、見せ方も、売り方も、自分の感覚を全開に活かせる形へと組み立てています。

何をつくるのか、どこまで手を加え、どこで手を止めるか、その判断を、他者ではなく自分自身で引き受ける。

自分と向き合い、深めることで作品が生まれる。
その作品が誰かの心を動かし、迎え入れられることで、また次の制作へとつながっていく。

僕のたどり着いた 理想の仕事の形。
それは、「作家」として生きることでした。


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