お便り

2026年3月12日
2026年3月12日 「Inclusion」
halcashipan

halcashipanの作品は、印刷した写真の上に絵の具で描き加えることで、絵と写真の境界が曖昧に溶け合い、一体となるように制作しています。

今回の個展で展示するアクリルレイヤーシリーズは、多層構造で色や影が写真の“肌”の上に重なり、見る人の立つ位置や光の当たり方によって揺らいで見えます。それは「単純ではない人の内面」や「本質」を表現しています。人は誰もが、清と濁をあわせ持っています。矛盾する要素が同時に存在し、重なり合い、影を落とし、ときに揺らぐ…目には見えないそれらは、だからこそ美しい。halcashipanの作品は、そのあり方を肯定する行為でもあります。

このシリーズは、展示以外ではほとんど公開していません。画面越しでは、作品が持つ本来の質感や奥行きが十分に伝わらないためです。透明な層がつくる奥行きと、光を受けて立ち上がる微細な表情の変化を、ぜひ会場でご覧ください。

Cashipanよりメッセージ
カメラを通して人と向き合うほどに、人は「こう見られたい」というベールをまとい、別の誰かへの憧れが、いまの自分から距離をつくることもあるのだと感じます。私たちが日々目にするポートレート写真は、果たしてその人を正しく映し出しているのでしょうか。

私はその問いを抱えながら、ベールの奥にあるその人らしさを丁寧に捉え、像として写し出したいと考えています。

カメラはより精細に、目の前の像を写す方向へ進化し続けています。一方で私たちが見ている世界はもっと不確かで、眩しさに目がくらんだり、暗がりの中で輪郭ではなく存在だけを感じたりするようなものです。景色は手軽に切り取られ、画像となり、膨大に収集・消費されていく…。こうした写真を取り巻く環境の進化は、ときに『見る』という行為を置き去りにしてしまうのではないか。

私は、自分の目に映る世界の感覚を大切にし、写真として、曖昧さや記憶の中に残る像の質感を写し取りたいと考えています。

halcashipanでは、写真と抽象画の重なりの中でこの問いへの答えを探しています。写真がとらえた光に絵が応答し、絵が生んだ揺らぎに写真がまた別の表情を返す。その対話の往復のなかで、目に見える像だけでなく、内面の感情や気配までも含めて、一つの作品として形にしたいと思っています。
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